発売日に運良く購入することが出来たので感想レビュー。
ヴェイパーフライについて
シューズに興味がある人なら一度は名前を聞いたことのある『ヴェイパーフライ』人気の秘訣は、ナイキのBreaking2プロジェクトという輝かしいスタートから始まり、フルマラソン世界記録を1分以上短縮。その後男子日本フルマラソン記録も16年ぶりに更新。この素晴らしい成績を支えたのが『ヴェイパーフライ』である。そんな好記録を支えてきたシューズは、発売当初エリートランナー向けシューズであり、市民ランナーではエリートレベルの選手しか履きこなすことが難しいシューズであった。だが、シリーズ更新につれ多くの市民ランナーが扱えるようにチューニングが施されてきている。そこで今作がどのような出来前になっているのか、順に解説して行く。

シューズ外観
側面
カラーはプロトタイプ。4作目であるが、初代と名前が非常に似ている。元々は「履くとマラソンタイムが4%縮まる」という由来であったが、現在は世代数で名付けられている。
アッパー素材は『エンジニアードメッシュアッパー』に変更され、伸縮性を感じないガッチリとした素材になった。(前作は『フライニットアッパー』)


背面
折りたたみのプルストラップを採用。踵部にはホログラムシールが貼られており、おそらく偽造品対策と思われる。


靴底
着地する前足部にのみラバー材を配置し、設置面積も幅広に。他は軽量化を重視し中足部はくり抜き、スリムな形状で仕上げられている。まるでハイヒールのような美しいフォルム。


重量
28cm/186g
非常に軽い。厚底シューズとは思えない軽さに圧巻。

価格とサイズ感
定価:297,00円(税込)
前作から約6,000円安くなったことに驚いた。前作は為替の影響で値上げしたと伺っていたが、現在も変わらず円安の状況。その中で定価を下げてきたのは間違いなく戦略価格であり、価格競争に参加しなければいけない状況になっている証拠。
サイズ感:普段のナイキ購入サイズでOK
前作も28cmを購入しており、今作も28cmにて問題がなかった。
他シューズとの比較は下記記事を参考に。
ファーストインプレッション
硬っ!メタパリ以上に硬くないか?重量は流石の軽さだけど、前作と方向性違いすぎないか?っというのが初感。
今までレビューしてきたフラグシップシューズの中で1番ミッドソールが硬いと感じていたアシックスのメタスピードパリシリーズを超える硬さに面食らった。そのためミッドソールが沈み込んで反発する感覚は弱い。その上シューズがコロンと転がるロッカー形状もない。つまりゴリゴリ蹴って押し進んでいくシューズになった。これはヴェイパーフライ4をハーフ向けに、アルファフライ3をフル向けに棲み分けるためのチューニングをしてきたのか?と考えざるを得ない。リーク前に「これヴェイパーフライの新作だよ」って渡されたら信用出来ないレベルに変わってて驚いた。前作と同じなのは踵の抜けやすさくらいかな(絶望)。

クッション性能について

MEDIUMレベル。やはり硬い。ミッドソール材の厚みがあるため、MIDIUMレベルに。薄かった場合はLOWレベルにしていた。他シューズとのクッションレベル比較は↓を参考に。
【徹底解剖】シューズの特徴
ヴェイパーフライ4の特徴は『ミッドソール』と『軽量性』の2点。
ミッドソール
前作同様にフルレングスで『ZoomX』を採用。しかし前作よりも圧倒的に硬度が上がっており、柔らかさは全くない。また搭載されている『FLYPLATE』(カーボンプレート)も前作より厚みを増した様子で、全体的に硬さのあるシューズに仕上がっている。そのため厚底であるが薄底シューズのように地面を蹴り、推進力を得る必要があるため良く言えば癖のないシューズ。悪く言えば扱える人は限られるシューズになった。(扱える人=脚力の強い人)

軽量性
前作よりも16g軽くなっている今作は、中足部後方よりミッドソールを大きく削ぎ落とし、軽量性を図ってきた。設置面積が減った分、安定感が悪くなったのか?っと心配になる点であるが、不安定感は一切なく完成度の高い仕上がりになっていると感じる。ただしアウトソール材も中足部から後方にかけて用意されていないため、ヒールフット着地のランナーが使用した場合、摩耗が激しくシューズの寿命が短くなると思われる。踵部に付いているラバーは『アルファフライ3』でも採用されていたが、ヒールフット着地のランナーはすぐに剥がれ落ちているイメージであるため、おまけ程度と考えるのが良いだろう。

気になる点
踵のフィット感
前作から変わっていない踵のフィット感。今作も踵が浮く感覚は健在している。実際のところ走っていて脱げそうになることはないため、軽量性を重視するためにNIKEとしては許容範囲内であると言うことだろうか…?『アルファフライ3』では踵の抜け感などはなく良好なフィット感であったことから『ヴェイパーフライ4』では改善されると思っていたが、変わらずの発売となり残念であると言わざるを得ない。


靴底のNIKEマーク削除
個人的に悲しかったのが、靴底のNIKEマークが消えた事。前走者の靴底がかっこよく、走っている時は眼福だったので悲しい。

ヴェイパーフライ4がオススメな人
個人的にサブ3を目指すレベルの私は、購入を見送ってもよかったシューズだと感じた(買いたくても買えない人がいるのは知ってますごめんなさい)。ただ皆さんが転売価格で買うくらいに焦る必要はないと伝えたい。先の通り、良く言えば癖のないシューズ。悪く言えば扱える人は限られるシューズになった。そのためオススメ出来る人は下記になる。
オススメする人
・厚底より薄底シューズが好みな人
・蹴って走る人
・脚力に自信のある人
オススメしない人
・厚底シューズ特有のクッション材の反発で推進力を得たい人
・ヒールフット着地の人
・フルマラソンメインの人(脚力がないと後半足が持たないと感じるため)
まとめ
総括:NIKE一強の時代は終わった
昨今厚底シューズは各社同レベルの性能になってきていると感じてはいたが、心の中で「NIKEなら新作で打開してくるのではないか?」と期待していた。だが今回ヴェイパーフライ4を履いて「NIKEでなければ勝てない時代は本当に終わったんだな」って感じた。厚底の時代を切り開いた先行者利益を享受出来る時間は終わった。これからのNIKEは他メーカーと肩を並べて勝負する立場に戻った。今作の値下げ価格はそれを自覚した選択なのだと感じた。
