勿体ないと思いなかなか履くことの出来なかったシューズ。シーズン到来前に履き下ろしたため使用感をレビュー。
アルファフライについて
靴底にエアポッド(Air Zoomユニット)が付いている奇抜な見た目や、ニュースで話題になったことからランナー以外にも認知度の高いシューズ。数多あるシューズの中でこれだけ話題になるのは性能の高さを裏付けしていることに他ならず、非公認大会であるが世界初フルマラソンで2時間切りを達成、トラック種目においても新記録の更新が続出し、世界陸連におけるシューズの厚み規制が設けられてしまったレベルに規格外のシューズ。ルールを変えてしまうほどシューズから得られる助力が凄いということに、当時の私も震撼した。そんな3代目となる『アルファフライ3』を今回レビューしていく。
シューズ外観
側面
カラーは『プロトタイプ』となり、プロトタイプ特有の白・黒・オレンジを基調とした配色。シューズは半分近くがミッドソールという極厚っぷり。アルファフライ特有の『Air Zoomユニット』が特徴的であるが、それ以上にスウォッシュマークが大きく目を惹かれる。ここまでブランドロゴが大きいと好き嫌いが分かれそうなデザイン。「20820-4」はテスト時のアスリート番号。
背面
踵より迫り出したミッドソールはおそらく安定感向上を目的としたもの。『V62』はアッパー素材である『アトムニット』のテスト回数を表している。
靴底
『Air Zoomユニット』の配置場所を大きく主張。中央部は軽量化のために大きくくり抜かれており『FLYPLATE』(カーボンプレート)がしっかり見える。またアウトソール材は前面にのみ付いており、白い部分はミッドソール材が剥き出し。ナイキのフラグシップレースシューズだけに 耐久性<軽量化 を意識していることが伺える。
重量
28cm/225g
見た目からすると非常に軽いが、昨今の各社レースシューズが200g前後が主流であるため少し重め。『Air Zoomユニット』などパーツ点数が多くなるため仕方ないと言った印象。
価格とサイズ感
定価:39,655円(税込)
高杉ワロタ。いや、消耗品とは思えない価格帯にもはや笑えない。発売当初は品切れ&転売が続出したが、現在は公式サイトを頻繁に覗いていると購入できるチャンスがある状況からも、消費者がランニングシューズの高額化に付いて行けていない気がする。だが、安かった場合はPS5のように高額転売が横行してしまうため、メーカー側が利益を取れる現在価格が適正だと思えてしまう。ありがとう転売ヤー。(なお転売ヤーは現在アシックスのメタスピードパリシリーズを転売するのに一生懸命なため、次はメタスピードシリーズが高額化するでしょうね…。)
サイズ感はいつものナイキ購入サイズでOK。
ただし、シューズの特性上つま先周りのボックスはゆとりがある。
♦️参考:他シューズサイズ
ゲルニンバス26→27.5cm
ペガサスプラス→28cm
ズームフライ5→28cm
ヴェイパーフライ3→28cm
【徹底解剖】シューズの特徴
アルファフライ3の特徴はシューズ全て。細部までこだわりが凄い。もちろん他シューズも全てこだわりを持ち作られているが、一般消費者が感じ取れるレベルに凄い。コスト<性能 に振り切ったシューズであると言える。
アッパー と 靴紐
スケスケでインソールの色まで見える。ここまで目が粗いとすぐに破けないか不安になるが、現在走っている限りでは破れる雰囲気はない。アッパーが破れるより先にミッドソールの反発力が失われるのではないかと予測。またシュータンは伸び縮みされる伸縮性のある素材で履き心地も良好。足が抜ける感覚は一切ない。また靴紐はヴェイパーフライなどでお馴染みの解けにくい工夫がされている紐。
ミッドソール と Air Zoomユニット
ビックリするくらいミッドソール材(Zoom X)が柔らかい。フルマラソンを走る上で足のダメージ軽減に大きく貢献してくれる。その上で、反発力も申し分ないのが恐ろしい。クッション性と反発力を高次元で両立させている。そんな『Zoom X』だけでも凄いが『Air Zoomユニット』も搭載されており、踏み潰すことで公式サイト記載通り、ロケットのような爆発力のある反発を貰うことができる。鬼に金棒とはまさにこのこと。
クッション性能について
文句なしのMAXレベル。
他シューズとの比較は↓を参考に。
ファーストインプレッション
柔らかい!でもAirZoomユニットの異物感が気になるな…。踏んでみよ。バヒューン。マジでロケットやんけ…。ってのが初感。
『Air Zoomユニット』が半端ない。爆発的な反発力を生み出しつつ、ロッカー構造のようにカクッンって足が前に出る。だが、シューズの重さはヴェイパーフライの方が軽く足の回転力は上がりにくい。むしろ『Air Zoomユニット』の反発力で強制的に歩幅が広くなるためストライド走法の方に向いているシューズであると感じた。ピッチ向けランナーには1歩の負荷が大きくなり回転力が落ちるため、あまりオススメできない。
アルファフライ3の気になる点
ミッドソール
先の特徴で挙げた通り、かなり柔らかい。そのため沈み込みが強く、好みが分かれるシューズであると感じた。人によっては、もう少し沈み込みが少なく早く反発を得たいと思う人もいるだろう。そんな人には『メタスピードパリシリーズ』が合っていると思う。
アウトソール
削れるのが早い。思っていた以上にアウトソールの耐久性は低そうな印象。現在50キロくらいであるが、イボイボが削れてきており、どこまで持ってくれるのか心配なところ…。
勿体なくて履けない
単純な理由ですが、高額すぎて気軽に履けない。レース本番に向けた強度の高いヤバめの練習でしか履けない。
アルファフライ3がオススメな人
試着できるチャンスが少ないため下記を参考に。
オススメな人
・フォアフット or ミッドフット着地ができる人(Air Zoomユニットを活かせる人)
・ストライド走法の人
・サブ3以内のランナーであること(反発力が強く強制的に4分20秒前後で走らされる)
オススメしない人
・ヒールフット着地の人
・ピッチ走法の人
・4分30秒以上がレースペースの人
・沈み込みの強いシューズが苦手な人
まとめ
総括:癖強めなシューズ
アルファフライ1代目が人気だった由縁でもある癖の強さが、良い意味で帰ってきていると感じた。また過去作までと違い、中足部が繋がったことで安定感も良好。ストライド走法向けの方が満足できる一品に仕上がっていると思う。だが、あまりの高額シューズに頻繁に履くことが出来ないのが悔しいところ。こだわりを凄く感じるシューズであるため、今後もこの路線を貫いて欲しいがこれ以上値段が上がらないで欲しいというジレンマ。